遺言執行者は誰でもなれる?選任された人ができること
遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、遺言者の残した遺言を実現するための手続きを行う人を指します。「遺言執行者はどんな人がなれるの?」「具体的にどんなことができるの?」と疑問に思う人も多いですよね。今回は、遺言執行者になれる人となれない人、どのように選任するのかについても詳しく解説していきます!
遺言執行者とは?
遺言執行者とは具体的にどんなことをする人なのか、その概要と選任する理由について解説します。
■遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために職務を行う人のことです。遺言執行者は「いごんしっこうしゃ」と読みます(法律では「遺言=いごん」と読みます)。相続人は複数人いることが多いですが、その中でも代表となる遺言執行者を決めておくことで、遺言を実現するための各種手続きがスムーズに進むのです。
■なぜ遺言執行者を選任するの?
先述の通り、遺言執行者には遺言を実現するための手続きをスムーズに進める役割があります。しかし、遺言執行者を選任する目的はそれだけではありません。そもそも「遺言(いごん)」とは、遺言者(被相続人)が自分の死後のために残しておくもので、原則として遺産はその遺言に従って相続人に分けられます。たとえば、「遺言者の所有していた不動産を相続人Aへと相続する」旨の遺言が残されていたとします。
しかし、Aがその不動産の登記手続きを怠ったり、別の相続人Bが勝手にその不動産を処分してしまったりといった可能性も否定できません。遺言執行者を選任していれば、不動産相続の登記手続きを遺言執行者が行うことができ、また、他の相続人が勝手に不動産を処分するのも防ぐことができます。
遺言執行者になれる人
では、遺言執行者となれるのはどんな人でしょうか?以下では、遺言執行者になれる人となれない人について解説します。
■遺言執行者になれる人
実は、遺言執行者となるための条件はとくにありません。「相続人の中から決めなければならないのでは?」「司法書士でなければならないのでは?」などと考えている人は多いですが、そのような制限はなく、また、一人ではなく複数人にお願いすることもできます。
注意点として「誰でもなれる」とはいえ「誰でもいい」わけではありません。身内や友人などから、信頼して遺言の実現を任せられる人を選任してくださいね。
■遺言執行者になれない人
遺言執行者は誰でもなれる、と記述しましたが、未成年者と破産者はその例外となります。未成年者や破産者は、遺言を正確に、着実に、公正に執行できる可能性が低いためです。これらは「遺言執行者の欠格事由」として、民法1009条に定められています。
遺言執行者ができること
遺言執行者の役割は遺言を確実に執行することとその手続き全般ですが、具体的には何ができるのでしょうか?遺言執行者ではない一般的な相続人にできることとして、遺産分割方法の指定、遺贈、寄付行為などが挙げられます。これらはすべて遺言執行者にもできることとなっています。
逆に「遺言執行者にしかできないこと」として、子どもの認知と相続人の排除や取り消しがあります。つまり、遺言に「Aを認知する」「Bを相続人から排除する」などの記載があった場合、それらを実行するには遺言執行者の選定が必須であるということになります。
遺言執行者の選び方
遺言執行者の選び方には3つの方法があります。ここではそれぞれの方法についてご紹介します。
■遺言者が遺言によって指定する
遺言執行者は、遺言の中で指定できます。「Aを遺言執行者とする」などの記載があれば、その文言をもって選任となります。
■遺言者が「遺言執行者を選任する人」を指定する
こちらは遺言者が直接遺言執行者を指定せず、遺言執行者を選任する人を指定するケースです。遺言者が自分では遺言執行者を決められない場合や誰に任せるべきか悩んでしまう場合に、遺言執行者の選任を任せたい人を指定できます。
■家庭裁判所に選任してもらう
遺言の中で遺言執行者や遺言執行者を選任する人が指定されていなかった場合、家庭裁判所に申し立てをすることで、遺言執行者を決めてもらうことができます。
また、遺言執行者を選任していたものの死亡してしまった場合や、選任された人が遺言執行者となることを拒否した場合、何らかの理由で解任されてしまった場合なども、家庭裁判所に申し立てることで選任を委ねることができます。
今回は、遺言執行者になれる人となれない人、その選任方法などを解説しました。遺言執行者は誰でもなることができますが、だからといって「誰でもいい」わけではありません。身内であれ第三者であれ、遺言の実行を安心して任せられる、信頼できる人物を選ばなければなりません。終活として遺言を作成しようと思っている人、遺言執行者の選任を考えている人は、今回の記事を参考にしてみてくださいね。