成年後見人とはどういうもの?なれる人の条件を解説!
「成年後見制度について詳しく知りたい」「成年後見人になる条件は」という疑問を持たれていませんか。高齢化が進んでいる日本では成年後見制度の重要性が高まっています。成年後見制度は上手に活用すれば判断能力が衰えた後でも安心して生活を送れます。この記事では成年後見制度の種類や違い、成年後見人になれる人の条件を詳しく解説します。
成年後見人には2種類ある
成年後見制度は認知症や知的障害、精神障害などさまざまな理由で判断能力が衰えてしまった方々が不利益を被らないように、家庭裁判所に申立てを行い、その方を援助してくれる制度のことです。
具体的には不動産や預貯金などの財産管理、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約、遺産分割の協議などを自分でするのが難しい場合に代わりに行ってくれる人を付けてくれます。
また、不利益な契約にもかかわらず判断ができずに契約を結んでしまったり、悪質商法の被害にあったりしないように判断能力の不充分な方々を保護・支援するのが成年後見制度です。
高齢者や障害者を特別扱いせずに、今までと変わらない生活を送ってもらう「ノーマライゼーション」、本人の意思決定を尊重して能力を活用する「自己決定の尊重」、本人の状況を把握し配慮する「身上配慮義務」の3つの理念を元に、介護保険制度とともにスタートしました。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があるので見ていきましょう。
■法定後見制度
法定後見制度とは、認知症などの脳障害および精神障害・知的障害などの理由で、自己判断能力が不充分となった時に活用します。本人の判断能力が不充分になった後に,家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度です。
身内もしくは民生委員や市区町村の役員などが家庭裁判所に後見人の選任申し出を行い、家庭裁判所によって成年後見人が選出されます。親族がいる場合、ほとんどは親族を後見人に選出されますが、身寄りがない方や親族であると問題が生じる可能性がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家や社会福祉士が選出されます。
■任意後見制度
任意後見制度とは、本人に充分な判断能力を有するときに、あらかじめ任意後見人となる人や将来その人に委任する内容を定めておき、本人の能力が不充分になった後に任意後見人がこれらの事務を本人に代わって行う制度です。
いくつかの制限はありますが、家族はもちろん、弁護士や司法書士を後見人として選ぶこともできます。身内を後見人とした場合は報酬を支払わないのが通例ですが、弁護士や司法書士などに後見人を依頼した場合は「契約」になるので報酬の支払いが発生します。
法定後見人と任意後見人の違い
法定後見人も任意後見人も本人の財産や権利を保護・支援するという部分は同じですが、大きく異なる部分があるので正しく理解しておきましょう。法定後見人と任意後見人の大きな違いは、後見の開始が本人の判断能力が衰える前か後かです。
・法定後見人
すでに本人の判断能力が衰えていることに対して、申立人が家庭裁判所に申立てを行い後見が開始されます。
・任意後見人
本人の判断能力がまだしっかりしている時点で後見契約を結ぶことで、実際に判断能力が衰えたときに後見を開始するといった違いがあります。
成年後見人になれる人とは?
成年後見人になるために特別な資格はありませんが、誰でもなれるものではありません。未成年者や破産者、以前に法定代理人を解任されたことがある人は成年後見人になれず、民法847条で定められた欠格事由に該当する場合も成年後見にとなることはできません。成年後見人は本人のためにどのような保護・支援が必要かの事情に応じて家庭裁判所が選任し、本人の親族以外に法律・福祉の専門家、その他の第三者や福祉関係の公益法人が選ばれる場合もあります。また、成年後見人は1人である必要はなく、複数選ぶことも可能です。
ほかにも、成年後見人を監督する成年後見監督人などが選ばれることもあります。後見開始の審判を申し立て、特定の人が成年後見人等に選ばれることを希望していた場合であっても家庭裁判所が希望どおりの人を成年後見人に選任するとは限りません。希望に沿わない人が成年後見人に選任された場合に不服申立てとして即時抗告が可能ですが、即時抗告期間(2週間)を経過した場合は成年後見人を定める審判が確定し、不服申立てできないので注意してください。近年では、第三者の専門職が成年後見人に選任されるケースが増えているようです。
理由としては、成年後見人となった親族が被後見人の財産を使い込むトラブルや親族間の対立が生じるケースが増えていることが挙げられます。また、成年後見人は、後見業務に支障がでないように、理由なしで解任できないようになっています。ただし「不正な行為があった場合」「著しい不行跡」「後見の任務に適しない事由」といった一定の理由があれば解任が可能です。現在の成年後見人が解任された後は、家庭裁判所に新たな後見人を選んでもらうことになります。
成年後見人とはどういうものか、どのような人が後見人になれるのかを解説しました。加齢や先天性のものだけでなく、誰かの世話にならなければ生活できなくなる事態は、いつ誰にでも起こり得ることです。成年後見人について正しく理解し、「この人が責任を持って管理する」という役割を、きちんと決めておくとよいかもしれません。