身元保証人がいない高齢者が増えている…必要となる場面とは?
会社に就職する際や病院に入院する際に身元保証書という書類の提出を求められることがあり、老人ホーム・介護施設などの高齢者施設に入居する際には身元保証人がほぼ必要になります。しかし、独り身の場合や頼れる身内が近隣にいない場合、家族や親族に迷惑をかけたくないと考えている方はどのように対処すればよいのでしょうか。
身元保証人がいない高齢者が増えている
さまざまな人生の重大局面で必要とされる身元保証人ですが、単身高齢世帯が増加した昨今では「独り身で身元保証人がいない」「家族や親族に頼めない・迷惑をかけたくない」といった悩みを抱えて困っている方がたくさんおられます。身元保証人がいない結果、介護施設に入れないという事態に陥ってしまうかもしれません。
実際に、ひとり暮らしの高齢者は増加傾向にあります。内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によれば、65歳以上のひとり暮らしは2013年には573万人でしたが、2019年には737万に増加し、今後の予測では2040年頃には896万人になるといわれているようです。ひとり暮らしの高齢者が増えることで、身寄りがなく身元保証人を立てることが困難になる人がさらに増加するといえるでしょう。
また、家族や親族がいる場合でも、「迷惑をかけたくない」と考え身元保証人を頼みづらいと感じる方もいます。身元保証人は家族や親族である必要はなく、友人などでも問題はありませんが、身元保証はトラブルや事件などで損害賠償が発生した際の金銭保証も目的とされているため、血縁関係がない人に頼みづらいのは事実です。そのため、たくさんの高齢者が身元保証人を立てることができずに困っています。
身元保証人が必要となる場面
高齢者が身元保証人を必要とするシーンを3つピックアップして解説します。
■入院時
多くの医療機関は入院する際に身元保証人を求められることがあり、厚生労働省研究班による研究では6割を超える医療機関が身元保証人を必要としています。入院時の緊急連絡先や入院費に関すること、入院計画書のことなどさまざまな理由から身元保証人が求められ、身元保証人がいないと入院できない医療機関もあるようです。
■介護施設入居時
介護施設へ入居する際にも身元保証人が必要です。身元保証人は基本1人ですが、中には身元保証人と連帯保証人をそれぞれ1人ずつ別に決めなければならない施設もあります。保証人の種類や人数は入居先を決めるときにあらかじめ確認しておくとよいでしょう。身元保証人が求められる理由は医療機関と同様に緊急連絡先や治療の際の手続き、月額費用の保証です。
■亡くなった時
被保証人が病院で亡くなった際に身元保証人が死亡確認に呼ばれ、死亡診断書を渡されます。遺体を引き取りやその後の葬儀の準備、行政機関・公共機関への各種手続きなども身元保証人が行わなければなりません。介護施設に入居していた場合は、退去手続きや利用料金の支払い清算、部屋の片付けや遺品の引き取り作業も身元引受人の役割です。
身元保証サービスの検討もおすすめ
身元保証人がいないからといって必ずしも入院や介護施設への入居を諦めなければいけないわけではありません。身元保証人がいらない介護施設もありますし、身元保証サービスを利用して身元保証人を立てる方法があります。
身元保証サービスとは身元保証人を代行する団体によって提供されるサービスで、内容はさまざまですがサービスによっては専門家と連携しながら財産管理や葬儀の手配までまとめて依頼することも可能です。身元保証サービスの主な形態を3つ解説するので見ていきましょう。
■一般社団法人
一般社団法人とは2人以上の社員がいる非営利法人のことです。非営利といってもボランティアではありません。ボランティア団体のイメージがあるかもしれませんが、一定の範囲内で事業を展開し、労働の対価として利益を得ています。
■NPO法人
NPO法人は社会貢献活動を目的とする特定非営利活動法人です。多くの場合に、身元保証人サービスの内容を限定して他の団体よりも低い料金でサービスを提供しています。
■株式会社
株式会社は一般社団法人やNPO法人と比較すると多種多様なオプションを提供しています。会社によっては直接身元保証を行わずに、本人の代わりに身元保証人を用意する会社も存在しているようです。
ただし、株式会社は営利目的で営業しているため、信頼できる会社であるか見極めなければいけません。運営元が株式会社の場合、会社が倒産してサービスを受けられなくなる可能性があることを覚えておきましょう。悪質な会社と契約してトラブルが発生するなどのデメリットもあるので、依頼する前にしっかりと契約内容を確認しておくことが大切です。
身元保証人が立てられない高齢者が増えている理由や身元保証人が必要な状況について解説しました。独り身で身元保証人が立てられない方や、親族が遠方に住んでいて緊急対応できない方などは身元保証サービスの検討をおすすめします。身元保証サービスを利用すれば、何かあって緊急搬送されたときや施設に入居したいときでも手続きがスムーズに進められるでしょう。