財産管理委任契約の手続きの流れとは?利用するときもポイントも解説
病気やケガで身体が不自由になったり、寝たきりになったりして、出歩くことができなくなった場合、自身の財産管理はどのように行えばよいのでしょうか?多くの場合、家族に代行してもらうと思いますが、専門家と財産管理委任契約を結ぶという選択肢もあります。そこで今回は、財産管理委任契約とはどういうものなのかを詳しくご紹介します。
財産管理委任契約とは?
財産管理委任契約とは、自身の財産管理や療養看護にかかわる事柄を、家族や専門家に委任する契約のことです。この契約は、「受任者」と「委任者」の当事者間で合意したものであれば、内容を自由に決めることができます。
■財産管理委任契約を結んだ方がよい場合とは?
財産管理委任契約の利用に適しているのは、「判断能力はあるが、身体が不自由で実行できない」という場合です。具体例は以下の通りですので、自分に当てはまるかどうか確認してみてください。
・病気やケガで外出できない
・身体に老化を感じるようになり、財産管理を一人ですることに不安がある
・生活するうえでの支払い・手続き等を行うのが困難である
財産管理委任契約のメリットとデメリット
ここからは、財産管理委任契約のメリットとデメリットをみていきたいと思います。自分にとってメリットが大きいのか、デメリットが大きいのかを知ることで、財産管理委任契約を利用するべきか検討しやすくなります。
■メリット
財産管理委任契約のメリットは、判断能力がある人であれば、誰でもすぐに契約できる点です。また、契約内容に縛りがなく、自由に設定できることや、契約後、判断能力が低下した場合でも委任を継続できる点もメリットといえるでしょう。
■デメリット
財産管理委任契約のデメリットは、登記制度がないため、社会的信用度が低いという点です。また後見人を監督する人がいないため、受任者をチェックすることが困難である点もデメリットのひとつです。さらに、判断能力を失った後に利用する成年後見制度とは違い、取消権がないというデメリットもあります。
財産管理委任契約の手続きの流れ
ここでは、財産管理委任契約を結ぶための手続きについて、流れを順に解説していきたいと思います。
■受任者を決める
まずは、信頼できる受任者を選びましょう。配偶者や子どもなどが候補に挙がることが多いと思いますが、そういった相手がいない場合、第三者である専門家に依頼できます。専門家に依頼するメリットは、情などに左右されることなく、仕事として的確に受任者を務めてもらえるということです。
ただし、1万円~5万円/月額ほどの報酬を支払う必要があるので、覚えておいてください。家族に受任者になってもらう場合は、報酬を自由に決めることが可能です。無報酬でも高報酬でも問題ありませんが、あとあとトラブルにならないよう慎重に決める必要があります。
■金融機関の対応を確認する
前述した通り、財産管理委任契約は社会的な信用度が高くないため、金融機関によっては対応してもらえないところがあります。対応状況は金融機関ごとによってまちまちで、代理人登録や委任状作成で対応してもらえるところもあるので、まずは利用したい金融機関に相談するところから始めてみてください。
■金融機関へ代理届を提出する
契約成立後、代理届を金融機関へ提出しましょう。代理届を提出しておけば、取引のたびに受任者であることを証明する必要がありません。一般的に代理届の内容は、「だれが、どんな取引を行えるのか」、「どれくらいの金額まで取引できるのか」を記載しないといけません。金融機関ごとの雛形に沿って作成しましょう。
■財産管理委任契約にかかる費用はどれくらい?
財産管理委任契約を結ぶための費用は、どれくらい掛かるのでしょうか?「だれを受任者に選ぶのか?」や「どれくらいの事務負担をお願いするのか?」によっても費用が変わってきますが、おおよその相場を確認してみましょう。
・受任者が専門家ではない場合(任意)
・受任者が専門家の場合(相談料:5,000円程度/回、契約書作成:5万円程度、月額報酬:1万円~5万円程度)
・契約書を公正証書にする場合(手数料:1万円程度~、郵送代など:5,000円程度)
財産管理委任契約を利用するときのポイント
判断能力さえあれば、だれでも簡単に契約できる財産管理委任契約ですが、安易に利用してしまうと、後のトラブルにつながりかねません。抑えるべきポイントをしっかりと確認しておくことが大切です。
■印鑑や通帳などの重要なものは都度返却してもらう
受任者を信頼しているからといって、印鑑や通帳などの重要なものを預けっぱなしにしておくことはよくありません。受任者に緊張感を持って管理してもらうためにも、その都度渡し、仕事が終われば返却してもらうようにしましょう。預り証のやり取りも忘れずに行うことで、返却した、していない、のトラブルを防ぐことができます。
■任意後見契約と併用する
財産管理委任契約の契約後に、委任者が認知症などで判断能力を失ってしまった場合、受任者が適切に仕事をしているか監督できなくなってしまいます。そういった場合に役立つのが、任意後見契約です。財産管理委任契約と同時に任意後見契約を結んでおくことで、判断能力がなくなってもすぐに、受任者が自分の後見人へと移行するため安心です。
■契約書は公正証書で作成する
契約書は、公正証書で作成することをおすすめします。手数料などの費用は発生しますが、社会的な信頼度が上がり、金融機関などからも対応してもらいやすくなるでしょう。
いかがだったでしょうか?今回は、財産管理委任契約について解説してきました。簡単に契約でき、契約内容にも縛りがないため、だれにとっても利用しやすい財産管理方法ということがお分かり頂けたと思います。しかし、自由度が高い分、適切な契約内容を作成するのが意外と難しいという反面もあります。メリットやデメリット、利用するときのポイントをしっかり理解して、自分に合っているかを判断することが大切です。